こんにちはQ太郎です。
VNインデックは高値天井15,000VNDを上値抵抗線として足踏み状態です。
銘柄によっては大きな下落調整局面に喘いでいるものも多く、市場には好不況両方の思惑が入り乱れているようです。
その背景には4つの要因が影響していると考えます。
この記事はベトナム株の調整局面において迷いが生じている方の道しるべになれば幸いです。
目 次
米国テーパリンと利上げは金融業界のブラックホール
現在のベトナム株式市場を考える上で、最も影響を与えているのは米国株式市場です。
次のグラフは世界の株式市場の株式時価総額です。
これを見れば米国が世界の株式市場の半分近くを占めており、その動向により各国は揺さぶられることが理解できると思います。
因みにベトナムと米国の株式時価総額は以下の通りです。
- アメリカ:45兆8,100億ドル( 2021年5月末 )
- ベトナム:2,920億ドル( 2021年8月9日 )
現在の米国FRBの量的緩和縮小(テーパリング)と利上げ予測により、ベトナム市場からも資金が米国に吸い寄せされていることが伺えます。
次の表は米国FRB が12月15日にテーパリングの加速を発表した後のベトナム市場における海外投資家の動向を現したものです。
ホーチミン証券取引所海外投資家週間動向(12月20日~12月24日)
買い | 売り | 売り越し分 | ||
---|---|---|---|---|
売買高 | 1億0992万9166株 | 1億1577万3366株 | 584万4200株 | |
売買代金 | 5兆3707億0690万VND | 5兆5266億4509万VND | 1559億3819万VND | |
ハノイ証券取引所海外投資家週間動向(12月20日~12月24日)
買い | 売り | 売り越し | ||
---|---|---|---|---|
売買高 | 260万0922株 | 1776万6555株 | 1516万5633株 | |
売買代金 | 797億5808万VND | 1兆0203億4323万VND | 9405億8515万VND | |
売り越し超過が続いていることは、米国の利上げ観測から外国人投資家流出していることを示唆しております。
一方各国の市場が低迷する中で米国株式市場だけが最高値を更新していることは、「 お金は相対的に金利の高い方へ動いていく 」原理原則を示唆しております。
見方を変えればベトナム株式市場は国内投資家に支えられている為、アメリカの金融重力に耐えVNインデックスは下値を切り上げつつあります。
出典:SBI証券
世界第二位の経済大国中国の景気減速、それは対岸の火事でない
中国のGDPは2028年には米国を抜いて、世界第一位となることが予想されております、つまり中国がクシャミをすれば世界中が不況に陥るような経済状況が現実味をおびております。
出典:CEBR World Economic League Table 2021
好不況の分かれ目を示す、製造業購買担当者指数( PMI )が50を割り込んだことを次の記事では報じております。
中国11月景況感節目割れ 民間調査、内需不振
英調査会社IHSマークイットは1日、中国の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)が11月は49・9だったと発表した。前月から0・7ポイント下がり、3カ月ぶりに下落に転じた。好不況を判断する節目の50も下回った。
出典:SankeiBiz
PMIは50を割り込むと不況入りしたとみなされる指標なんですよ
中国の景気減速の要因は複数の要因が絡みあっている。
- ゼロコロナ政策による経済活動の停滞
- 環境政策による電力不足
- 商品市況の上昇によるコスト増
- 不動産投資規制による不動産市場の下落
- 民間企業への政府の介入
マイナスの影響としては中国から部材などの輸入が停滞すれば、ベトナム製造業への影響は避けれません。
一方不動産投資規制で行き場を失った中国不動産マネーが周辺国に流れ込み、不動産セクターを押し上げることも予想されます。
日本では北海道に第二のニセコを探す中国マネーがうろつきだしていることからも、その動きには注意が必要です。
新型変異ウィルス(オミクロン株)再拡大への懸念
ベトナムに限らず、世界中でオミクロン株の感染再拡大が今年前半の最大の懸念要因となる公算です。
特にベトナムは昨年8月に実行された社会的隔離措置の影響が甚大で、GDP(7-9月)が前年同期比-6.17%に急落する程のインパクトがありました。
それは世界中のサプライチェーンに影響を及ぼしました。
現代は世界的サプライチェーンの為、他国で起きている問題は他人事ではないんじゃ
特にベトナムにはワイヤーハーネスの工場が多く、この部品の供給停滞でトヨタ自動車ですら、9月に世界中で36万台の減産を強いられることになりました。
ベトナム市民のオミクロン株への警戒が分かるデータを次の記事の中で発見しました。
出典:VIETKABU
いつも有益な内容を発信しているVIETKABUの記事で、12月の全国消費者物価指数(CPI)の中で交通が-1.7%と前月11月比で項目中最大の下落を示しております。
これはオミクロン株拡大を懸念し、11月に比べ市民が移動を控えだしたことを示唆しております。
一方で私は以下の理由から、昨年8月のような社会的隔離程の大きなロックダウンは起きないと予測しております。
- 12月時点で2回目のワクチン接種率が68%に到達
- 2021年には3回目のブースター接種が予定
- 日本政府からのワクチンの提供
- 塩野義製薬製ワクチンと飲み薬の臨床試験協力
世界中で猛威を振るったインフレ
米国FRBはインフレは一時的ではなく長引くとの見解ですが、それを鵜呑みにしていいのでしょうか?
株式投資をしていく上で最も懸念されるのがインフレによる原材料動向と株価の影響です。
いつの時代もこれが明確に現れるのが火力発電銘柄です。
石炭を燃やして発電するだけの単純なビジネスモデルで、また値上げも政府の意向等もあり機動的に変更出来ない為、株価が直に反応します。
以下は石炭価格の推移になります。
出典:世界経済のネタ帳
以下は火力発電会社PPCの株価の推移になります。
出典:SBI証券
火力発電会社程ではありませんが、どの会社も原材料価格の動向に株価は左右されます。
石炭価格は下落に転じておりますが、一方で石油価格はOPECプラスの高値維持の思惑もあり、いまだに先行き不透明です。
出典:世界経済のネタ帳
しかし一頃市場で大騒ぎになった半導体や木材の価格は落ち着きを取り戻しつつあります。
次のチャートは代表的な半導体指数SOX指数です。
出典:TradingView
次のチャートは木材価格の推移になります。
出典:世界経済のネタ帳
このように2021年5月をピークに下落傾向にあります。
私はインフレについては、米国のインフレと新興国で起きているインフレには本質的な違いがあると考えております。
- 米国のインフレ:人手不足と物流停滞によるインフレ
- 新興国インフレ:原材料高騰によるインフレ
「大退職」した人の半分は仕事に戻ってこない…ゴールドマン・サックスの調査で
新型コロナウイルスのパンデミックからの回復に伴い、労働力不足が何カ月も続いている。 ゴールドマン・サックスの調査によると、パンデミックの間に500万人分の労働力を失った。 そのうち約250万人は退職後に仕事に戻らないため、労働力に大きな穴が空いたままになっている。 アメリカ中が人手不足だという報道はすぐには終わらないかもしれない。なぜならば大量の定年退職者によって労働力を失ってしまい、その多くは仕事に戻らないからだ。 ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のジャン・ハッチウス(Jan Hatzius)率いる研究者チームが2021年11月12日に発表したレポートによると、労働力人口から離脱した人、つまり仕事をしていないか、積極的に仕事を探していない人のうち、340万人が55歳以上であることが分かった。そのうち約150万人が早期退職者であり、約100万人は引退した人たちだという。レポートでは、この2つの退職者グループは「仕事に戻らない可能性が高い」とある。つまり、ゴールドマン・サックスは、現在不足している500万人の労働者のうち、約半数は労働力としてもう戻って来ないかもしれないと考えているのだ。
出典:YAHOO Japan ニュース
米国ではコロナ禍による金融緩和が人々の金融資産を膨張させ、それにより定年退職の前倒しを誘発し、皮肉にも労働力不足を背景にしたインフレを発生させてしまったと考えます。
長距離トラックドライバーなど高齢で退職者の割合が多い業種が物流停滞を招いたのですね。
新興国で起きているインフレは原料高騰によるものが多いのですが、価格が落ち着きつつある原料も散見されるようになってきております。
原材料価格の安定はいずれ業績の好転と株高へと繋がる公算です。
まとめ:VNインデックス15,000VND超えは近い4つの理由
- 米国テーパリングの重力以上にベトナム国内投資家が市場を買い支える
- 中国の景気減速は懸念されるが悪影響だけでなく良い影響もあり
- 新型オミクロンによる社会的隔離は起きない
- 米国のインフレと違い、ベトナムのインフレは解消傾向の公算
皆さんが資産と笑顔に溢れることを祈っております。
対酒当歌人生幾何、それではまた。
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