株価に漂う不穏な気配、その背景には第一Qの業績が

市況

こんにちは、Q太郎です。

VNインデックスもHNXインデックスも4月に入り、上値が重い展開が続いております、コロナ禍の拡大を防ぎ、昨年はプラスの経済成長を達成したベトナムですが何が起きているのか?

4月に入り株価が軟調に推移

昨年10月ごろから始まったVNインデックスとHNXインデックスの高騰は、1月19日から大きな調整局面を迎えましたが、力強い回復をみせてそのまま節目である1,300VNDと300VNDをアウトブレイクするかに思えました。

しかし4月に入るとその勢いは精彩を欠き軟調に推移しております。

次のチャートはVNインデックスの日足チャートになります。

出典:SBI証券

また次のチャートはHNXインデックスチャートになります。

出典:SBI証券

師曰く、「 私は毎日株価をチェックします、毎日見ているとその微妙な変化を感じとることができるようになるものです、奥さんの機嫌の良し悪しもその顔を毎日見ているからわかるのです。」

私は毎日お昼と夕方に株価を確認いたします、4月の株価の変調はよもや第一Qの結果が期待を裏切るものが多いのではと心配しはじめたのは4月も半ばを過ぎた頃でした。

相次ぐ期待を裏切る第一Qの結果に耳を疑う

4月に入り最初の悲報はLCG第16リコジ建設の2021年の業績目標の記事でした、この記事を4月7日に目にした際に、何やら不吉な予感を覚えました。

出典:VIETKABU

この記事では次のことが報じられておりました。

  • 2021年の業績目標:売上高が前年比+1.8%増の3兆6000億VND(約173億円)
  • 税引き後利益が同▲3.5%減3000億VND(約14.4億円)
  • 1~3月の業績速報:売上高が前年同期比+14%増の4700億VND(約22.6億円)
  • 1~3月の税引き後利益が同4.6倍の570億VND(約2.7億円)

LCGは昨年私の保有銘柄中、購入日以降右肩あがりで購入から1年をまたず、ダブルバガーを達成した銘柄です。

そのLCGの業績目標が売上が+1.8%増で税引き後利益が同▲3.5%減では株価下落は避けられないと思いました。次のチャートはLCGの日足チャートになります。

出典:VIETKABU

実際今年の3月中旬より株価は変調し、その後下落が続いております。

私の不吉な予感は、各社の第一Qの業績を確認するにつれて、予感から確証へと変化しました。

次のリストは私が毎日株価を確認する銘柄です。2021年第一Qについて、①が2020年第四Qとの比較、②が2020年第一Qとの比較、そして③が2020年第一QのPES増減比較。

  1. VHM :①減収減益、②増収減益、③+5.9%
  2. NHA :①減収減益、②増収減益、③−67.5%
  3. PDR :①減収減益、②減収増益、③+29.3%
  4. LCG :①減収減益、②増収増益、③+96.3%
  5. ACL :①増収減益、②増収増益、③−75.9%
  6. DHC :①増収増益、②増収増益、③+74.5%
  7. DMC :①減収減益、②減収減益、③−29.5%
  8. IMP :①減収減益、②減収増益、③+2.2%
  9. WSS :①減収減益、②増収減益、③赤字化
  10. HPG :①増収増益、②増収増益、③+92.2%
  11. NTP :①減収増益、②増収増益、③+0%
  12. LHG :①減収減益、②減収減益、③+16.2%
  13. LSS :①増収増益、②増収減益、③−44%
  14. KBC :①増収増益、②増収増益、③−7.6%
  15. APS :①増収減益、②増収増益、③黒字化
  16. CII :①減収減益、②増収減益、③−93.7%
  17. TCB :①増収増益、②増収増益、③+36.7%
  18. TMS :①減収増益、②増収増益、③+12.5%
  19. DCL :①減収減益、②減収増益、③−27.4%
  20. AMV :①減収減益、②減収減益、③−91.7%
  21. DBC :①減収増益、②増収増益、③+96%

このように①~③全てにおいて、プラスを達成しているのは、DHC、HPG、TCBの僅か3銘柄だけです。

第一Qの業績がこのような状況では、今後数ヶ月間の株価下落トレンドは避けられないと危惧しております。

遅れるワクチン接種と厳格なコロナ管理

昨年、ベトナムは厳格なコロナ感染管理を徹底することで、東南アジアで唯一のプラスの経済成長を維持できた国です、今年はその成長が更に加速すると期待しましたが、長引くコロナ禍が経済成長へ未だ影を落とし続けているようです。

一方、世界を見渡せば連日最多の感染者数を更新していたアメリカは、ワクチン接種により6月末にも集団免疫が達成されるとの期待から、世界に先駆けて経済活動が復活し、連日公表される経済指標には、経済復活の力強さを実感させられます。

やはりこのコロナ禍が終息するには、ワクチン接種とそれによる集団免疫獲得が必要不可欠であることは多くの人が同意できることかと思います。

そこでベトナムのコロナの感染拡大防止とワクチンについて調べてみると、興味深い記事を発見しました。

出典:日経新聞

昨年秋に日本とベトナムの往来再開のニュースを耳にした際は、非常に両国の経済にとって前向きであり、ワクチンによる集団免疫の獲得がなくても、2019年を超える経済成長を達成できるのではと楽観視しておりました。

しかし前述の記事では、往来は再開したものの制度は非常に使い勝手が悪く、事前の行動計画表の提出や、外出時の付き添い人の同行など、ビジネスの現場においては実現性の難しい制度となって、利用者は殆どいない状況であることが報じられておりました。

見方を変えると、ここまで厳重な感染拡大防止の管理を徹底しているから、ベトナムではコロナの感染者数が低いレベルに抑えられているとの見方ができます。

一方ワクチンについては、その政治的な判断に疑問符がつきます。

次の記事はその政策について報じた記事です。

出典:日経新聞

この記事ではベトナムが国産のワクチン開発を進めていることが報じられておりました、その背景には東南アジアで「 ワクチン外交 」を展開する中国に対し、領有権問題などで政治的影響力を回避する意図が透けて見えます。

またベトナムは自国生産にこだわり過ぎた為に、ワクチンの輸入において後手になってしまいました。

私が危惧するのは、国内の製薬メーカーが未だジェネリック薬の生産をしているぐらいの医薬開発レベルの状況で、自国開発にこだわり過ぎるのは、集団免疫獲得時期を遅らせることになり、結果コロナによる経済への悪影響を長引かせてしまうことです。

歴史上、アメリカと中国の2大大国と戦争をして負けなかったベトナムの強さがこのような政治的な判断にも影響しているのではと想像を掻き立てられます。

一方で世界ではしたたかな外交戦略で、ワクチン接種を加速させている国も存在します。

出典:日経新聞

この記事では南米のチリが、6月末までに人口の8割のワクチン接種を目指し、主要国では最速ペースで接種を進めていることが報じられておりました。

そのワクチン接種を支えているのが、ワクチン入手の全方位外交です。同国はワクチンを米英中からしたたかに調達しております。

このチリの全方位外交を投資家的な視点で眺めると、重要なことを示唆していることに気づかされます、それは分散投資です。

ワクチンの自国生産にこだわるベトナムは、投資戦略で例えると1銘柄に集中投資をしているような状況です。

翻って第一Qの結果を踏まえ、今後の株価調整局面を考慮すれば、できるだけ分散投資をしておくことが大切ではないかと思います。

前述したLCGのように、第一Qの結果が良くても通期の業績目標について、厳しい予測をしている銘柄は、下落トレンドが懸念される為、比較的好業績が見込めるセクターの銘柄に乗り換えておくことが得策かと考えます。

まだ全てのセクターで第一Qの結果が出揃ってはおりませんが、金融セクター、とりわけ銀行株の第一Qについて、ポジティブな印象を受けております。おそらく銀行のビジネスが、多業種を相手にしている為、商売自体に分散効果が効いているのではと考えます。

またHPGのようなセクターのリーディングカンパニーで、2021年業績について強気の目標を設定し、材料価格高騰に対して有効な対策を講じている企業に投資するのが賢明です。

なぜならば、2020年から各国の中央銀行によりばらまかれたお金は経済を下支えしましたが、株や債券だけでなくコモディティーにも急速に流れ込んでおります。

師曰く、「 株価の上げ下げを気にすることは、海を見て波の高い低いを気にしているようなものです、優れた漁師は波の高さなどより、潮の流れを注意深く読んでいる者です。」

ワクチン接種が進む国の企業業績が回復すれば、材料価格の高騰を容認せざる得ないトレンドになり、コモディテーの高騰に一層拍車がかかります、業績回復が遅れているベトナム企業が、業績回復より前に世界的なコモディティー高騰の嵐に巻き込まれる可能性は否定できません。

それではまた、対酒当歌人生幾何。

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